学会設立の趣旨

 

 学校教職員の一員としての養護教諭が,子どもの健康問題の複雑さ・深刻さに伴う形で益々注目されるようになりました。そしてその社会的期待に応える形で,養護教諭の子どもへの対応についての研究がなされております。例えば学校健康相談に関する研究もその一つであり,日本学校健康相談学会の活動も大いにその発展に寄与していると思われます。 

ところで,そのような養護教諭による健康相談が十分な実をあげるためには,まずは,子どもたちや大人・社会からの養護教諭に対する信頼がなければなりません。その信頼はどこからくるのでしょうか。たとえば,日頃の心身の不調や怪我の発生への対応の確かさも大きな要素になるのではないでしょうか。それでは,その救急処置・心身の不調時の対応(あわせて学校救急看護)についてはどのような体系があるのでしょうか。また,そこには,養護教諭独自のかかわり方が明らかにされているのでしょうか。学校場面での子どもたちへの対応が,養護教諭の養護の方法の一環として,独自の体系に基づくものでなければならないでしょう。これまで一人ひとりの養護教諭が実践の中で積み上げてきた方法論を,養護教諭の立場から捉え直し,養護の営みとして学問的に体系づけていく時期にきたのではないかと思います。 

 

「養護教諭-その専門性と機能-」(1970,東山書房)を著した小倉学は,養護教諭の機能の発展過程の起源に「学校救急看護の機能」をあげました。すなわち,これを養護教諭の機能であると宣言したのです。学校という場で,成長過程にある子ども達に生じた事故や傷病発生に対して,悪化防止のための処置と教育的配慮・指導を行うのは,医療の場における看護とは異なるものであるとし,最も適切な対応ができる職種が養護教諭であると述べているのです。学校救急看護は,養護教諭の専門性を示す重要な機能なのです。 

 

これまで,日本学校健康相談学会でも学校救急看護の内容が取り上げられてきました。子どもを相手に行われている養護教諭の対応は,どこからが救急看護であり,どこからが健康相談というように明確な区分はできないのが実態ですが,それぞれの分野について深く研究をすすめていく必要があるのも事実です。養護教諭の独自な実践の方法をより鮮明にするために,「日本学校健康相談学会」の姉妹学会として「日本学校救急看護学会」の活動を積み重ねてきました。 

 

一人ひとりの研究を交流し,相互の研究を深め合いましょう。また,一人ではできないような組織的研究も進めていきましょう。力をあわせて,学校救急看護という養護教諭の実践の根拠となる理論を築いていきましょう。